『フライング☆ラビッツ』

フライング☆ラビッツ』に『ハッピーフライト』と、奇しくも同じ時期に国内大手航空会社全面協力による映画が相次いで公開。JAL vs ANAの場外対決に、さぞかし航空業界も盛り上がるだろうと思いきや、あっさり前者が自滅。クオリティも興行もズタズタとあっては、宣伝効果どころじゃありません。「こんなはずじゃ・・・」と嘆いているJAL広報担当の姿が目に浮かぶ・・・。でも、まったく話題にもならずひっそりフェードアウトしたのは、逆に救いだったかも。
それぐらい、なんとも微妙な映画でした。スッチー?バスケ?スポ根?友情?青春?コメディ???どれもこれもが中途半端で、一体何を描きたかったのかサッパリ。とりあえず人気女優でスッチーものでもやっとく?ぐらいの、安易な企画で始まったんじゃないかと勘繰りたくなるほどに、中身がスカスカなのです。どんなテーマで、何を伝えたいのか。作品の柱となるものが見えないままに作ると、こういう映画が出来ますよという、まるでお手本のような作品。
それでも、真木よう子さえ見れればと思っていたのだけど、こちらも肩透かし状態。いつもながらのキャラだったのはいいとして、それがストーリーに全く生かされていないのが残念でした。パンチが足りないと言うか・・・もっと真木ちゃんをガッツリ主人公と絡ませて、対照的なキャラを際立たせた方が面白くなったと思うんだけどな。石原さとみちゃんは本当にこういう役がよく似合う。似合うんだけど、なんだかお腹一杯。「パズル」と全然違うキャラなのにあまり代わり映えしないのは、演技のパターンがお決まりだからかな。そして何よりも高田純次のキャラが意味不明。あの設定は何の必要性があったんだろう・・・。
とまぁ色々書いてしまったけど、すごくつまらなかったわけではないです。ウケ狙いはことごとく滑ってるものの、それなりにTVでごろ寝しながら見るには十分楽しめる感じ。ただ、映画としてお金を取れるクオリティには程遠いということです。これだから、「東映は・・・」って言われちゃうんだろうな、きっと。
評価 ★★☆☆☆

『ハッピーフライト』

キャストは地味。だけど、それぞれの個性にピタリとはまったキャスティングが見事に調和し、地に足の着いた作品に仕上がっていました。さすが矢口監督。代表作『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』のような青春映画とは違い、今回は航空業界を舞台にしたお仕事ドラマ。ANA全面協力のもと、知られざる業界の裏側までしっかり描かれており、見ごたえ十分。「トリビアの泉」のごとく「へぇ〜」の連発で、航空マニアでなくとも十分に楽しめます。某作品とは大違いだ・・・。
ストーリーは、とある国際便を舞台に巻き起こるドタバタ群像劇。でも決してありがちなパイロットとCAの物語ではなく、フライトに関わるあらゆる職業にスポットを当てているのが新鮮です。おそらく膨大な量に上ったであろう取材メモの中から、興味深いエピソードを巧みに選び、細かく視点を切り替えることでストーリーに厚みを持たせながら上手くまとめた矢口監督の手腕はさすが。前半軽いタッチでコミカルにドタバタ騒動を描きつつも、それぞれのプロフェッショナルな一面をリアルに見せ、緊迫感もたっぷり。この辺のさじ加減も絶妙でした。
宣伝では主演の田辺誠一綾瀬はるかが目立ってますが、決して彼らの映画ではありません。もちろん、田辺さんもめちゃくちゃいいキャラしてましたけど、時任三郎寺島しのぶ田畑智子岸部一徳大人計画平岩紙などもいい味を出しており、皆それぞれが主役といった感じ。日本では珍しい、本格的なアンサンブル映画に仕上がっています。その他にも、田中哲司笹野高史ベンガル、ちょい役で小日向文世など、まぁ豪華なこと。あと、TV版「WATER BOYS」の石井智也ヨーロッパ企画の永野さんを飛行機オタク役で発見し、思わずニヤリ(笑)。とにかく、色んな角度から楽しめる、良質なエンターテイメント作品だと思います。
ということで、JAL vs ANA の映画対決はANAの圧勝でした。個人的に、乗るならJAL派なんですけどね・・・。
評価 ★★★★☆

『ハンサム★スーツ』

上半期分から邦画レビューが溜まりに溜まってますが、とりあえず新作を。

これはもう、あのバカさ加減についていけるか否かで、評価が大きく分かれる作品でしょう。私は思い切り楽しめました。『嫌われ松子の一生』や『ラブコン』での、自己陶酔型ハンサム*1を演じた谷原章介がツボな人にはたまらない作品です。ハンサムをコテコテに演じても嫌味にならない。というよりむしろ、それを笑いに変えられるのは谷原章介ならでは。これぞ谷章の真骨頂とでも言わんばかりに、体を張ってハンサムになった元ブサイク男を熱演し、お笑いパートを一手に引き受けていました。
一方のお笑い芸人塚地も、愛すべきブサイク面を最大の武器に、シリアスパートで役者っぷりを発揮。谷章と塚地のパートが本職と真逆な辺りがまた新鮮で上手いなと。「モップ・ガール」で谷章と、『間宮兄弟』で塚地と共演済みな北川景子の相性もよく、意外なところで森三中の大島がいい味を出していたりとキャスティングもはまってます。佐田真由美の本業を生かした役柄といい、いつも美味しいとこ取りなぬっくん(温水洋一)といい、その他豪華チョイ役にいたるまでピッタリでした。
そして、実はこの映画にはある秘密が隠されているんですが、それがまたいい意味でベタなんですよ。ある意味、観客の希望通りな展開(笑)。おかげで、笑いまくって、ストレス発散して、ハッピーな気持ちになれました。久々に楽しいB級映画に出会えて大満足です。

評価 ★★★★☆

*1:”イケメン”ではなく”ハンサム”ってところがポイント(笑)

2008年10月期ドラマ所感

10月クールの連ドラが出揃ったところで、1〜2話を見た個人的感想を。

”あの「ラスト・フレンズ」スタッフが送る月9ドラマ”が煽り文句みたいですが。既視感たっぷりなポスターにサブタイトルと、ここまでラスフレ人気に乗っかりまくるのはどうなんでしょう。私の目には少々いやらしく映ります。そもそもあのドラマは達者な若手役者陣で持っていたと言っても過言ではなく、終盤にかけてのグダグダでいい加減な展開は、見事な芝居を見せた役者が気の毒なほどでしたから。しかも今回は、頼みの俳優陣からしてパンチに欠ける上、一部ド素人なキャスティング。期待より不安の方が大きいのは私だけでしょうか?いざ蓋を開けてみると、これまた窃盗、盗撮、ストーカー、不法侵入という犯罪まがいの行為を「切ない恋心」というオブラートに包み、正当化してしまう超絶展開(苦笑)。さすがあの宗佑を美化しちゃった脚本家さんですわ。感覚ズレまくり。もうツッコミ所満載で、別の意味で面白すぎでしたけど。しかし、堀北真希ちゃんは可愛い。可愛いけど、あのキャラはいただけないです。まるで、自分の欲求を抑えられないただの痛い子ちゃんみたい。勝手に舞い上がって、勝手に泣いて、また舞い上がって彼女気取りで、落胆して・・・と、延々と一人ジェットコースター状態。ぶっちゃけ、全く共感できません。ラスフレの主人公ミチルに通じるイライラ感を感じました。とにかく暗いし。っていうか、全員が暗すぎて見ていてひたすら鬱々としてくる。でもま、久々にいい感じのナリ(成宮寛貴)や不気味な内田有紀、兄(福士誠治)の過去など色々気になるので、一応見続ける予定です。因みにゆずに関しては、本業だけに徹しておけばよかったのにねー。です。はい。
ハマリ度 ★★☆☆☆

ゴハン食べながらバラエティ感覚で楽しむにはちょうどいいドラマ。どう頑張っても上戸彩はセレブに見えないし、上地はやっぱり上地のままだけど、ありえなさすぎな展開だから、ぶっちゃけ何でもありに思えてくる。月曜で滅入った気分を吹き飛ばすにはもってこいかも。そして子役がとっても可愛いです。無償に卵かけご飯が食べたくなるドラマ。

ハマリ度 ★★★☆☆

原作の出来、役者の知名度からしてTBS「恋空」の二の舞はありえないけど、どう考えても犯人の割れているミステリーを11回で見せるには無理がある。と思ったら、原作とは犯人を変えるそうで。なるほど、「アンフェア」方式ですか。しかし、2時間の映画でちょうどいい尺を無理やり伸ばした分、やっぱりメリハリのないかったるい雰囲気は拭えず。肝心の手術シーンが、これっぽっちも緊迫感がなく拍子抜けでした。「医龍」ぐらい見せてよ、関テレさん。あと、やっぱり伊藤淳史が主演というのはちょっと厳しいかも。出世には興味ないけど、昼行灯と見せかけて実は図太い神経の持ち主という、原作のキャラからかけ離れ、気弱なお人よしといういつもながらの伊藤くんキャラで新鮮味がない。唯一の見所は仲村トオルぐらいかな。ま、これからいろんな人の裏の顔が見えてくると思うし、伊原剛志城田優に期待して、視聴継続決定です。

ハマリ度 ★★★☆☆

ハケンの品格」スタッフによるお仕事ドラマだし、「斉藤さん」観月ありさだしってことで、スカッとしたドラマを期待していたら、全然違った。むしろ、不快感で一杯。ということで、早々と記念すべき今期脱落第1号となりました。

ハマリ度 ★☆☆☆☆

緒形拳さんの急死により、急激に注目を浴びているこのドラマ。個人的に富良野へ行ったばかりなのでなんとなく見始めたんだけど、めずらしく骨太で渋い作品ではあるものの、今のところ個人的にはあまり惹かれるものがない。肝心の富良野の景色は殆んどないし、中井貴一の軟派なキャラにどうも違和感。ついでに言うと、愛人を演じる平原綾香の妙にこなれた演技にも違和感。とりあえず、時間が合えば見ます。
ハマリ度 ★★☆☆☆

来ました、今期一番の期待作!まさか蔵之介さんが主演張る日が来るとは。ちょっと演技に力入っちゃってるけど、いいキャラしてます。マイホームパパとホストの切り替えがたまりません。っていうか、決してイケメンじゃないのに、カッコよく見えてくるのは、単に私が好きだから?同じく大好きな真矢みきも、「シバトラ」の妙な化粧が元に戻り、いい感じ。ストーリーはベタだけど、徐々に周囲の心を捉えていく展開は気持ちよく、毎週楽しんで見られそうです。
ハマリ度 ★★★★☆

あの東野作品を、クドカンが料理したらどうなるのか?・・・うん、やっぱりこうなるのか(汗)。多分、異色タッグによる相乗効果を狙ったんだろうけど、思いっきり不協和音奏でちゃってません?しかもクドカンなのに、コメディ演技のできるキャストがいないのが致命的。役作りどころかセリフ言うので精一杯って感じで、全然笑えない(汗)。。*1この調子でちゃんと悲劇を描けるんでしょうか。とにかく、見ていてやたらむず痒くなるドラマでした。
ハマリ度 ★★☆☆☆

実は、録画したまままだ1度も見れてません。初回2時間ってのがネックでした。なかなかゆっくり見る時間が作れない・・・。けど、面白そうなので期待してます。
ハマリ度 未採点

杏ちゃん・・・(絶句)。しばらく見ないうちに、ずいぶんと・・・(ゴニョゴニョ)。初主演となった水嶋ヒロも、イケメンキャラ以外だと驚くほど魅力がない。「イケパラ」の難波先輩はいい感じだったのに。というか、完全に井川遥渡部篤郎に飲まれてます。個人的に好きな枠だけど、今回はなんていうか、やりたい事がうまく形にできていない感じ?面白くしよう、面白くしようと頑張りすぎて、空回っちゃってると言うか。ま、どんなにつまらなくても見続けますけどね。ムロツヨシのために(笑)。
ハマリ度 ★★☆☆☆


ということで、個人的に、今期も今ひとつな感じです。

*1:主演のお2人。コメディ演技は先輩長瀬くんに習いましょう。

『幸せの1ページ』

いや〜久々に邦題に騙されました(苦笑)。ジョディー・フォスター主演だし、タイトルと予告からしててっきり大人向けの心温まるラブ・ファンタジーだと思っていたら、全っ然違いました。エンドロールで原題が『NIM'S ISLAND.』であることを知り、いたく納得。まさにこの映画はニムという少女による離島での冒険ファンタジー物語。ジョディー・フォスターはサブキャラでしかなかったわけです。う〜ん、邦題と原題がかけ離れた作品は多々あるけど、やっぱりこれって軽く詐欺にあった気分だわ・・・。因みに邦題は、ラストのいかにも取ってつけたような展開からワンフレーズ切取っただけ。見事に本編とは関係ございませんでした。
ということで、あくまで助演のジョディー・フォスターは、たまにしか出てきません。しかもかなりイッちゃってるヒッキー*1な小説家役で、別人のような壊れっぷり。知的なイメージをかなぐり捨てたなりふり構わぬコメディエンヌっぷりに女優魂を感じつつも、吉本バリのオーバーリアクションが何とも痛々しく目に映ります。
一方のニムは、まさに女版トム・ソーヤ。島を我が庭のように駆け回り、父との2人っきりの離島生活を侵略者*2から必至で守るべく孤立奮闘。古典的な罠で立ち向かうその戦略がベタなら、火山は張りぼてとテイストはチープながらも、あくまで子供の空想の世界という感じで、そこは結構楽しめました。離島なのに自宅のインテリアがやけに最先端のお洒落なのも、いかにも女の子の妄想ファンタジーっぽくてありかなと。
ただ、それらのシーンと、父親の遭難と、ジョディーのパートと、それぞれがまるっきり噛みあっていなかったのが問題でした。冒険物にしたいのか、コメディーにしたいのか、夢溢れるファンタジーにしたいのか。まるで別々の作品を細切れにして無理やりくっつけたような継ぎ接ぎ感たっぷりで、こちらとしてもどういうスタンスで見ればいいのかさっぱりで。主人公を演じた子役はなかなか良かったんですけどね、中途半端というか・・・ぶっちゃけつまらなかったです。
さてと、これで洋画のレビューはとりあえず追いついたので、次から邦画に取り掛かりますか。
評価 ★★☆☆☆

*1:引きこもり

*2:金持ちリゾート客

『カンフー・パンダ』

試写会にて吹替え版を鑑賞。洋画は字幕がポリシー*1なので、全然期待せずにいったらやられました。山口達也が思いの外頑張っていたし、師匠の笹野さんがもうバッチリ。というか、むしろ字幕に気を取られることなくスピーディーなカンフーアクションを堪能できるし、今作に限っては吹替えも全然アリでした。ま、その後字幕版見に行ったら、さすがジャック・ブラックって感じでしたが。

見所は主人公のパンダ(ポー)のどこまでもユル〜いキャラと成長過程。そして、ジャッキー・チェンも真っ青の華麗なカンフーアクションでしょうか。特に師匠とポーの稽古シーンの面白さは、ジャッキー映画を彷彿とさせます。あまり深く語るような映画じゃないけど、大人も子供も楽しめる娯楽作としてはかなり完成度の高い作品ではないかと。さすがはドリームワークスですね。
それにしても。同じ時期に『少林少女』『カンフーくん』『カンフーダンク』と、やけにカンフー映画が続きましたが。あれは一体何だったんだろう?
評価 ★★★★☆

*1:吹替えのわざとらしさが苦手

『イントゥ・ザ・ワイルド』

裕福な家庭に生まれエリート大学を卒業した青年が、家族も地位もお金も全てを捨て、アラスカへ放浪の旅へでたまま消息を絶つまでの軌跡を描いたドラマ。実在の青年の話しだけあって、まるでドキュメンタリーを見ているような作品でした。アカデミー賞候補とも言われ、一部では非常に評価の高い作品のようですが。う〜ん・・・万人向けでは決してないかも。非常に見る人を選ぶ作品だと思います。およそ2時間半もの間、物悲しい雰囲気のままひたすら淡々と青年の無謀ともいえる放浪の様が描かれているから。こういうのが苦手な人にとってはひたすら苦痛な時間に感じるか、もしくは眠気との戦いかもしれません。
で、私はと言うと、最初は自殺行為とも言うべき彼の行動に全く共感できませんでした。人との関わりを絶ち、家族を捨て、自分だけならまだしも結果的に彼と関わった多くの人の心に悲しみを与えることに、何の価値があったのだろうかと。あまりにも極端な彼の思考はどこか宗教じみた危うさも感じ、最初は淡々とした描写と相まって見続けるのに結構な忍耐が必要でした。
でも頑張って見ていると、なぜか次第に引き込まれてしまったんです。人との関わりから逃げているようで、実はとても人懐っこい主人公。本当は誰よりも人の温もりを求めていたのかもしれない。でも、それを自分で認めたくなかったのか、それとも気付いていなかっただけなのか。彼が目指すは雪に覆われたアラスカの大地。まるで何かに挑んでいるかのように生命力に溢れ、一人ぼっちなサバイバル生活を楽しんでいた主人公。でもそれは、彼が命の尊さをわかっていなかったから。いつでも元の地に戻れると思っていたから。きっと、自分の知力と生命力を過信するあまり、自然の力を甘く見ていたのでしょうね。雪が解けて、平原が激流へと姿を変えて帰路を絶たれたと知った時、初めて死の恐怖が彼を捕らえるわけです。その途端、今まで輝いて見えたアラスカの大地が、真っ暗な孤独の地へと一気に様変わりしてしまう。その瞬間の例えようもない恐怖が手に取るように伝わってきました。人は一度平常心を見失ってしまうと、焦りが致命的なミスを誘い、やがて負の連鎖がまわり始める。そんな例えようもない孤独と恐怖の中で、彼はようやく家族のありがたみを痛感し、自分の心が人の温もりを求めていたことに気付くわけです。でも時は既に遅し。取り返しの付かない事をしたと悟った時にはもう、ただ空を眺めて最後の時を待つことしか出来なかった。
や〜、正直、キツイ映画でした。彼の人生に共感こそ出来ないけどその心情は十分理解できたし、かなり引き込まれたのは確かです。でも、あまりにも報われない。彼自身の後悔と無念、残された家族や友人の悲しみがずっしりと胸にのしかかり、やり場のない思いで一杯でした。体裁ばかりを気にしたエリートな父親(ウィリアム・ハート)が、最後道端で両足を投げ出して泣き出すシーンはたまらなかったです。もう帰りの足取りが重いこと重いこと。仕事帰りに見るにはヘビーな1本でした。
評価 ★★★☆☆