『ハッピーフライト』

キャストは地味。だけど、それぞれの個性にピタリとはまったキャスティングが見事に調和し、地に足の着いた作品に仕上がっていました。さすが矢口監督。代表作『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』のような青春映画とは違い、今回は航空業界を舞台にしたお仕事ドラマ。ANA全面協力のもと、知られざる業界の裏側までしっかり描かれており、見ごたえ十分。「トリビアの泉」のごとく「へぇ〜」の連発で、航空マニアでなくとも十分に楽しめます。某作品とは大違いだ・・・。
ストーリーは、とある国際便を舞台に巻き起こるドタバタ群像劇。でも決してありがちなパイロットとCAの物語ではなく、フライトに関わるあらゆる職業にスポットを当てているのが新鮮です。おそらく膨大な量に上ったであろう取材メモの中から、興味深いエピソードを巧みに選び、細かく視点を切り替えることでストーリーに厚みを持たせながら上手くまとめた矢口監督の手腕はさすが。前半軽いタッチでコミカルにドタバタ騒動を描きつつも、それぞれのプロフェッショナルな一面をリアルに見せ、緊迫感もたっぷり。この辺のさじ加減も絶妙でした。
宣伝では主演の田辺誠一綾瀬はるかが目立ってますが、決して彼らの映画ではありません。もちろん、田辺さんもめちゃくちゃいいキャラしてましたけど、時任三郎寺島しのぶ田畑智子岸部一徳大人計画平岩紙などもいい味を出しており、皆それぞれが主役といった感じ。日本では珍しい、本格的なアンサンブル映画に仕上がっています。その他にも、田中哲司笹野高史ベンガル、ちょい役で小日向文世など、まぁ豪華なこと。あと、TV版「WATER BOYS」の石井智也ヨーロッパ企画の永野さんを飛行機オタク役で発見し、思わずニヤリ(笑)。とにかく、色んな角度から楽しめる、良質なエンターテイメント作品だと思います。
ということで、JAL vs ANA の映画対決はANAの圧勝でした。個人的に、乗るならJAL派なんですけどね・・・。
評価 ★★★★☆