『オリヲン座からの招待状』

宮沢りえ、細っ!今にもポキッと折れそうな細さに、前半はそればっかりが気になる気になる。自転車こぐシーンなんて、もう痛々しくすら見えて辛かったけど、でも、やっぱり綺麗な人だなと思った。特にほんのり色気漂う浴衣姿は、女性の私から見ても見惚れるほど。対する加瀬亮も、こういう朴訥とした青年が良く似合う。不器用な会話の中に、優しさと、実直さと、もどかしいぐらいピュアな愛情が伝わってくる表情がとてもよかったです。やっぱり好きだなー加瀬亮宮沢りえの夫役、宇崎竜童のぶっきらぼうな態度の中に見せる優しさも、これがまた以外にも愛しく見えてきて、とにかく役者がいい味を出していただけに、彼らを生かしきれていない脚本が残念で仕方ありません。
せめて、もうちょっと丁寧に登場人物の関わり合いや生き様を描けなかったものかと。夫を亡くした宮沢りえと、彼女に恋心を抱きつつも、父親のように慕っていた宇崎竜童の意志を継ぐべく献身的に映画館を支える加瀬亮。世間の冷たい視線に晒されながらも、時代の波に飲まれそうになる映画館を必至の思いで守り続けた彼らが、どんな心境で耐え忍び、支えあい、どうやって乗り切って来たのか。いわばそこがこの映画の肝であり、その過程があるからこそラストの閉館が感動を呼ぶというのに。肝心の部分をサックリ省いてぶつ切り状態となったストーリーは、ひたすら盛り上がりもせずに淡々と進み、結局最後まで感情を掻き立てられることがありませんでした。そもそも、現代と昭和の2部構成の中に、純愛、苦労、閉館、夫婦の再生といったテーマを雑然と詰め込もうとしたことに無理があったのではないかと。役者も雰囲気もとてもいいし、決して悪い映画じゃないんだけど・・・期待が過ぎたのか、物足りなさの残る作品でした。
因みにこの映画、あの東宝の大作『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編と同じ11/3が公開日。同じ昭和物ってことで何かと比較されることも多いと思うけど、これはちょっとお呼びじゃないなと。映画の規模や制作費、キャストの豪華さ云々ではなく、純粋に『三丁目』には、じわっと胸にあふれてくる温かい感動があった。だからあんなに多くの人に支持されたわけで、そう考えると『オリヲン座』は厳しいなというのが本音ですね。やっぱり、脚本と演出の手腕って大きいな・・・。宮沢りえ加瀬亮がよかっただけに、もうちょっと何とかしてくれればと、惜しい気持ちで一杯でした。

評価 ★★★☆☆