『クワイエットルームにようこそ』

内田有紀にとって9年ぶりとなる主演映画。でも私が注目したのは、原作・脚本・演出が松尾スズキ、キャストも宮藤官九郎蒼井優に超脇役で妻夫木聡という、私のツボを刺激しまくりな名前がズラリを顔を揃えていた事。これは見逃す手はないなと、ワクワクしながら試写へ足を運んできました。ただ、内田有紀ってどうも昔のアイドル的なイメージしかなかったので、正直この面子で彼女が主演ってのはちょっと弱いでしょ・・・と思っていたら。意外にも内田有紀が一番良くってビックリしました。「バンビーノ」も結構よかったけど、正直、こんなにしっかりと演技が出来る人だとは思っていなかったので。あの難しい役をとても自然にこなし、堂々の主役っぷりでした。おまけにどんな汚れ役でも品を損なわないどころか、ますます美人が際立って見えるから不思議です。クドカンは言うまでもなくヘタレがピッタリだし、拒食症の役柄に合わせてウェイトを絞った蒼井優の冷めた演技も文句なし。鉄の心を持った看護婦りょうの、切れた口の中を指でなぞる時に見せた一瞬の狂気も印象的で、馬渕英俚可のホンワカ具合と好対照。大竹しのぶの下品な演技は天下一品だし*1、一文字眉毛のブッキーも、ガスパッチョのテンションにヘナチョコぶりを加えた渾身の顔芸を見せてくれ、全ての出演者から目が離せませんでした。

作品のテーマはかなりヘビー。日常に潜む非日常への落とし穴。その中でもがく人々の姿をエキセントリックな笑いを交えてリアルに描き出した松尾スズキはやっぱりすごい才能かもしれない。一見遠い世界の出来事のように見えて、実は誰もが陥る可能性のある事を肌で感じさせられてしまう、そんな映画。単純に好みで言えば決して好きな題材じゃないけど、とても見ごたえのある一本でした。

評価 ★★★★☆

*1:一応ホメ言葉