『ミス・ポター』

ピーターラビットの生みの親、ビアトリクス・ポターの生涯を描いた本作は、根強い階級差別が残り、女性の社会的地位がまだ確立されていない時代に、天性の才能を持ち合わせた1人の女性が、自らの力で生きていく姿が力強く描かれていました。もちろん、ものすごく波乱に富んだ人生というわけではないので、映画としてはどちらかと言えば淡々とした地味な印象ではあります。でも、イギリス湖水地方の素朴な風景と、可愛らしいピーターラビット達の姿に癒され、現代社会で時間に追われ心がとんがっていた自分には、ポターの世界がとても心地よく心に響いて来ました。『ベイブ』の監督だけあって、絵の中の世界に生きる動物たちに息吹を与え、ポターと共演させる辺りもとてもファンタジックで。シルバニアファミリーで遊んだ幼い頃の、あの自分だけの空想の世界に夢中になった感覚がふと蘇ってきました。
ブリジット・ジョーンズの日記』以来すっかりイギリス映画の雰囲気が似合う女優となったレニー・ゼルウィガーは、古風な顔立ちがこの時代にピッタリ。独特なファニーボイスがポターのふわふわとしたキャラにはまり、38歳とは思えないキュートさを醸し出していました。編集者ノーマンを演じたユアン・マクレガーも、最初こそその風貌に違和感を感じたものの、誠実で控え目な心優しき男性を魅力タップリに演じていて。このところ「スター・ウォーズ」やら「アイランド」やらSFづいていたので、こんな感じのユアンは久々。レニーとの相性も良く、2人の目と目で会話するあたりがとても良かったです。大っぴらに愛を伝えられないこの時代だからこそ、ポターとノーマンが互いに目で心を通わしていく、そんな静かで奥ゆかしい愛の形が素敵でした。時代の流れに反して、自分の意思にしたがって行動したポター。思いもよらぬ悲しみをも乗り越え、ようやく自分の生きる道と生涯の伴侶を見つけた彼女の姿に、1人の女性として考えされられるものがありました。何でも一定の型に当てはめ、それを外れると眉をひそめる世間の風潮は今も昔も変わらずですが、ポターがもし世間の例に倣って若いうちに親の決めた相手と結婚していれば、世界で愛される名作は生まれなかったし、何より彼女自身が息苦しい日々を過ごしたことでしょう。人間、何をもって幸せとするかはその人次第・・・なんですよね。
因みに本日の試写会はロレアルパリさん主催。上映前にメイクアップ・アーティストによるワンポイントメイク講座があり、フムフムと頭の中にこそっとメモしてみたり。帰りにはなんとベースクリームとファンデーション*1をセットでいただけるという太っ腹。段取りに不手際が目立ち時間押し捲りな試写会だったけど、イケメン揃いのメイクアドバイザーと豪華なお土産で、すっかり上機嫌のまま帰路についた私でした(笑)。

評価 ★★★★☆

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*1:しかもコンパクトケース付き