『Life 天国で君に逢えたら』

若くしてガンで亡くなった実在のプロウィンドサーファー飯島夏樹さんの生き様を、丁寧に優しく描いた作品でした。飯島さんの事は、ちょうど彼がハワイで闘病生活を送っていた頃に新聞で取り上げられていたのを目にしていて、その後亡くなられたとのニュースを耳にした時のこともよく覚えてます。だから彼のエッセイを元に映画が作られると聞いた時はすごく興味を持ったのと同時に、発表されたキャスティングに愕然としたりもして。「あちゃ〜、よりによって伊東美咲か・・・」と。申し訳ないけど、彼女に情感豊かで、かつ自然な演技ができるとは思えず、作品の世界が壊れてしまうんじゃないかって、そんな心配が真っ先に浮かびました。ところが、意外なことにこの映画での彼女は予想外によくて。もちろん演技力は相変わらずだし、あの吐息が漏れる発声方法も健在。4人の子供の母親にだって全然見えなかったけど、でも前向きで一生懸命な姿が好感持てて、演技云々を気にすることなくどっぷりと映画の世界に入り込んで見ることが出来ました。
そして大沢たかお。こちらもウィンドサーファーの柄じゃないでしょ、と思っていたら・・・これが似合う似合う。日焼けした肌に真っ白な歯の眩しいこと(笑)。逞しい現役時代から、ガン発病後うつ病になる姿までをリアルに演じ、何より爽やかな笑顔が飯島夏樹さんの人生に重なり、涙が止まりませんでした。最近の大沢たかおっていいですよね。年輪とともにいい味が出てきたというか。以前は全然興味なかったのに、いつの間にか見たいと思える俳優さんの1人になりました。
それにしても、貧乏サーファー時代から闘病生活に至るまで、どんなに苦労をしてもいつも笑顔を絶やさす、夫の看病生活すら楽しいと口にして献身的に愛情を注ぐひろこさんには感服しました。何て素敵で、何て強い女性なんでしょう。そんな夏樹さん夫妻の命に真っ直ぐ向き合う姿に、生きることの意味や家族愛などを深く考えされられました。あざとい演出や過剰に美化したエピソードを極力排除し、飯島さんの弱いところも、迷いも、不安も、全てをありのままに描こうとしたからこそ、家族という存在の大きさと温かさ、生きることへの感謝の気持ちがスッと心に響いて来るんだと思います。難病ものは苦手な方も大丈夫。「またね」という子供たちの言葉が春風のように心を通り抜け、悲しみの中にも新たな力が沸いてくるような、素敵な作品でした。

評価 ★★★★☆

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