『夜の上海』

ブログのカテゴリでは一応邦画にしてみたけど、正式には日中合作映画。監督さんは中国の方。ということで、アジア映画ではジャッキー・チェン金城武の出ている作品しか見たことがない私としては、日本映画とは違う雰囲気が結構新鮮でした。でも新鮮=高評価には繋がらなかったのが残念なところ。上海の夜景と異国情緒溢れるBGMは良かったものの、全体的にはとてもチグハグな印象の残る作品でした。まず一番の原因は、主人公のキャラが定まっていなかったこと。クールだったり、キザだったり、かと思うと突然子供のようにはしゃいでみたり。妙にウケ狙いな演出と、統一感のない演技にどうも視点が定まらず、人間の多面性というにはあまりにも唐突な感がありました。やっぱり、主人公のキャラはもっと丁寧に作って欲しいというか、色んな顔を見せるにしても、根底はブレちゃダメだと思う。一本芯が通ってないと、見ている側としては感情移入がしにくいです。
演出に対する違和感は他にも。言葉の通じない人達が、次第にお互いを理解していく過程は心にじんわりと温かみを与えてくれたし、悲しみや喜びを共有し合うのに国境は無用なんだって、そう思わせてくれるテーマはすごく良かったのに。その世界に浸ろうとするたびに、タイミング良く(?)織り込まれるギャグシーンが、一気に現実に引き戻してくれちゃうもんだから参った参った。そもそも、タクシーで空中に跳ね飛ばされてあの展開はあり得ないし、それ以上にあの意識を取り戻した後のブレイクダンス風な演技が完璧無理でした。はっきり言って全然笑えなかった(汗)。竹中直人ブルースリーとかもマジで要らない。竹中さんは決して嫌いじゃないけど、こうも同じ演技ばかり見せられるとさすがにゲンナリします。インチキ日本語なんてまんま「のだめ」のミルヒーじゃないですか。ま、それが彼の芸風だし、他にもうさん臭い通訳のキャラといいそれが監督の狙いでもあったんだろうけど、何故こんな安っぽい演出にこだわったのか理解に苦しむな。この監督さんの特徴なんでしょうか?私に言わせれば、コメディもラブストーリーもどっちつかずの中途半端になってしまった最大の要因だと思います。それと、塚本高史は一体なんだったんだろう?サイドストーリーとは言え、あまりにも唐突かつ理解不能な存在で、彼の出る意味があったのか疑問です。最近出過ぎな感のある彼だけど、どうでもいいような役が多い気がする。もっとじっくり作品を選べばいいのに・・・って、これは余計なお世話ですね、失礼しました。
と、まずは不満ばかりを書きたてましたが、一方で収穫もちゃんとありました。中国映画は好んで見たことがないのでヴィッキー・チャオはお初でしたが、彼女がとても鮮烈な印象を与えてくれました。黙っていると菅野美穂にしか見えないけど*1、気が強くてガサツな中にも愛らしさと繊細さを兼ね備え、2人の心が近づく過程をとても自然に演じていました。化粧っ気のない顔なのに、これががまたとても可愛くて。そんな彼女をいつしか本気で心配し、見守る本木雅弘も素敵でした。2人が心を通わせていく様子が無理なく描かれていただけに、合間での不要なギャグシーンが悔やまれるばかりです。ラストも、あそこで終わっちゃうのは途中でお預けを喰らった気分。その後の2人をもうちょっと見ていたかったのに・・・な〜んか消化不良な映画でした。残念。

評価 ★★☆☆☆

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*1:ついでに幼馴染のドンドンは速水もこみちにしか見えない