『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

スペシャルドラマ、月9と続き、今度は映画化。大泉洋版の『東京タワー』も良かったけど、私としてはこの映画版が一番しっくり来た。真打登場って感じかな。もはや手垢が付きまくった題材ながらも、商業的な匂いがしない丁寧な作りで好感が持てます。いつの間にかオダギリジョー樹木希林に自分と母の姿を重ねながら見入ってしまい、家に帰って母親にありったけの愛情を注ぎたくなったりもして。実際、うちの母が樹木希林とソックリに見えて来るから不思議。でも、一緒に見た友人も同じ事を言っていたので、具体的に顔の造りがどうのではなく、それだけ樹木希林が演じたオカンが普遍的な存在だったからなんだと思う。底抜けに明るくて頼もしいオカンの田中裕子や、逞しくてパワフルな倍賞美津子とは違い、一番どこにでもいそうな普通のオカンなんだけど。でも息子への底なしの愛情がとっても自然で。すごく身近で親しみやすいオカン像だったからこそ、見る人それぞれの母親に不思議とシンクロするんだと思う。*1
とにかく、樹木希林演じるオカンの可愛らしいこと。素朴で、温かくて。息子への深い愛情が胸に染み入る一方で、オダジョー演じるボクの想いもまた、ストレートに伝わって来る。オトンの小林薫も良かったし、カメオ出演の豪華ゲストも程よく馴染み、文句なしのキャスティングでした。個人的には心優しきオカマちゃんを演じた勝地涼に頑張ったで賞をあげたいかな。でも彼、ちょっと太った?あのムッチリ感はどちらかと言うと苦手だし、モヒカンには噴いたけど*2、要所要所でさり気なくいい味出してました。言うまでもなく脚本と演出も秀逸。笑いがとても温かで、作品全体を包み込むノスタルジックな雰囲気が心地良く、あざとい演出も一切なし。オカンとボクとオトンの、それぞれの想いがスッと心に入り込み、奥底の感情を静かに揺さぶられる感じ。やっぱり脚本を書いた松尾スズキがリリーさんと近しい立場だからなのかな。原作の持つエッセンスが一番純粋かつストレートに込められた作品だったと思います。
評価 ★★★★☆

*1:因みにオカンは三者三様それぞれに味があって良かったです

*2:エライ、良くぞ頑張った(笑)