『どろろ』

昨年試写で見ているので今更な感想ですが、旬な映画なので。一言で言えば持ち前の笑顔を封印して次々と妖怪を倒していく百鬼丸妻夫木聡がとにかく格好いい映画でした。これはファン必見でしょう。撮り方からして、彼の魅力を余すところなく映し出す事に心血を注いでいるのが良くわかります。どろろを演じた柴崎コウもとても生き生きしてた。最初は違和感のあったべらんめえ口調の演技も物語が進むにつれて見慣れ、*1妻夫木クンとの息もピッタリで。物語の大半が2人の演技にかかっているとも言えるこの映画において、互いにしっかりその役割を担っていたと思います。ただ2人ともカツゼツの悪さが気になりましたけど。
その点で言うと瑛太はとても聞き取りやすいいい声をしていると思う。今回格好良さにおいてはブッキーに敵わないものの*2、わずかな登場シーンながらもその立ち居振る舞いに多宝丸の人となりや複雑な感情をしっかり滲ませており、天下を目指す武将の息子に相応しい育ちの良さと、どこか人を見下したような気位の高さが良く出ていました。母の愛と自分のアイデンティティを必死に守ろうと、百鬼丸に向かっていく辺りも切なかった。ただそこへ至るまでの過程がサックリ省略されていたのが残念。せっかく瑛太も、妻夫木クンも、父親の中井貴一さんもいい演技をしていたんだし、この辺りの描き方次第でもっと深みのある作品になったと思うんだけど。因みに瑛太さん、『オレンジデイズ』に続きまたしても気の毒な役回りではあったけど、最後は心根の素直で凛々しい一面が見れて良かった良かった。後髪を束ねた鎧姿も良く似合い、本格時代劇で彼を見てみたくなりました。
そんな瑛太がとても勉強になったと言う中井貴一はさすがの貫禄。時代劇はお手の物なだけあって、まずその佇まいからして格が違うもの。最近すっかり悪役づいてしまった感もあるけど、彼を筆頭に原田芳雄らベテランのいぶし銀のような存在が、この映画に重みを与えていたと思います。しかしそれでもやはり、前半のど派手なアクションに力を入れすぎて後半息切れしてしまった感は否めず。手塚作品の強いメッセージもアクションにかき消され、残念ながら人間ドラマとしては非常に薄っぺらい映画と言わざるを得ないでしょう。そしてあの妖怪のチープなCG、あれはもっとどうにか出来なかったのだろうか。冒頭の戦国シーンや百鬼丸の腕の処理は見事だったのに。いや技術というよりセンスの問題かもしれない。どこぞの特撮映画と大差ない出来で、役者が真面目な顔して熱演すればする程滑稽に見えてしまったのが惜しまれます。でもこの映画、驚いた事に4週連続興行収入のトップを走る大ヒット。改めて手塚作品の人気と妻夫木聡柴崎コウの動員力の大きさを実感。と同時に、こういう気楽に見れる単純な娯楽作が世間には受けるんだなと。*3この調子だと来年あたり「残り24体」を取りもどす百鬼丸の姿が見れるかも??
評価 ★★★☆☆

*1:「♪あなたのお名前なんてーの♪」はさすがにキビシかったけど

*2:今回は役柄上仕方ないかな

*3:でも本当にこれでいいんだろうか邦画界は・・・