『ドリームガールズ』

歌、歌、歌、そしてまた歌。女性ボーカルグループの成功と挫折を描いたブロードウェイミュージカルが元になっているだけあって、豪華で迫力あるパフォーマンスが存分に味わえる作品でした。さすがの私も見終わった後少々音酔い気味になったほどのド迫力。前半は軽快なナンバーとともにスターダムに上り詰めるまでをテンポ良く描き、後半はショービズ界の光と影をソウルフルナンバー中心にリアルに描いたこの作品。今回の目玉はビヨンセの新境地とも言えるソウルフルなバラード。のはずが、終わってみればビヨンセの影の何とも薄いこと。無名の新人ジェニファー・ハドソンが、その圧倒的な歌唱力と自信に満ち溢れた強烈な存在感で、スーパースターのビヨンセを完全に食った形となっていました。

もちろんビヨンセも後半の見せ場で意地の熱唱を見せていたし、持ち前の美貌を発揮してスターへと階段を駆け上がっていくディーナにピッタリだったけど。でも、今回ばかりは分が悪かったかなという感じでしょうか。むしろ恵まれたルックスとプロモーターの力でスターダムへとのし上がる辺りといい、歌唱力ではジェニファー演じるエフィーに及ばない辺りといい、皮肉なほど役柄と本人の姿がリンクしてしまい、何だかビヨンセが気の毒に思えてしまった。同じく人気に陰りの見え始めたエディ・マーフィに落ちぶれた大スターを演じさせるなど、あまりにリアルなその配役はシビアなショービス界そのものと言えるかも。もちろんエディも芸達者なところを存分に発揮していましたが。さて、今作で一躍脚光を浴び、アメリカンドリームを実現させたジェニファー・ハドソン。彼女が今度どんな道を歩んでいくのか。まさに紆余曲折なドラマが待ち受けている気がします。
評価 ★★★★☆