『手紙』

意外にも山田孝之が漫才頑張っていて驚きました。でも、彼が出て来るだけで画面いっぱいに陰のオーラが満ちてしまうのはどうしたものかと。伏目がちでボソボソとした喋り方。どの作品でも同じ演技に見えてしまい、正直「またか」と思ってしまう。『ウォーターボーイズ』の頃のキラキラとした輝きはすっかり影を潜めたままで残念です。一方の沢尻エリカも、不慣れな関西弁と濃すぎるメイクや派手な外見がネックとなって役柄にどうも違和感が。ストーリー展開も今ひとつ面白味がなく、中盤までは全く入り込めませんでした。でも、物語が動き始めた後半が素晴らしかった。犯罪者となってしまった兄の苦しみ、被害者遺族の苦しみ、そして犯罪者の家族というレッテルを貼られた弟の苦しみ。それぞれがそれぞれに辛い日々を送っている。そんな複雑に絡み合った思いが少しずつ解けていく様に、涙が止まりませんでした。特に最後の玉鉄の渾身の演技が素晴らしかった。この人、こんな演技も出来たんですね。そしてその思いを戸惑いつつも受け止め、兄への気持ちを漫才に託して伝える山田孝之も良かったです。温かくて清々しい気持ちになれるラスト。とてもいい映画でした。