『ワールド・トレード・センター』

タイトルと予告映像に惹かれて期待していた作品。それだけに、肩透かしを喰らった感が否めません。確かに舞台はあのワールド・トレード・センター。でも、そこに描かれていたのは、瓦礫の下に埋もれた主人公の苦痛と恐怖、そして残された家族の絶望の姿という非常にパーソナルな世界だけでした。史上稀に見る惨劇を生んだ9.11の同時多発テロは、あくまで添え物。主人公達の悲劇のきっかけとして申し訳け程度に描かれているだけで、その背景や事実関係などは一切触れられずじまい。これで『ワールド・トレード・センター』と題するのはどうかと思う。このタイトルを据えた以上は、もっと9.11を掘り下げた作品にするべきだったと、私は思います。