『初恋』

3億円強盗事件の実行犯は女子高生だった。このコピーと宮崎あおい主演に惹かれて見に行って来ました。女子高生がどうやって見事に世間の裏をかいたのか。そして、それが初恋とどう絡み合うのか。その辺りを期待していたせいか、非常に物足りない映画でした。世間をあっと言わしめた3億円強奪のスリルも、初恋の胸キュンも、どちらもが中途半端。え?いつの間に好きだったの?え?大犯罪なのにそんな簡単に手伝っちゃうの?え?そんな無防備でいいの?と戸惑っているうちに、あっさり成功。何ひとつとして気持ちが入り込む間もなく全てが終わってしまいました。すごく拍子抜け。
あおいちゃんはふとした瞬間の目がとても印象的な女優さん。彼女の目にはちゃんと感情が宿っている。だから、セリフがなくても強い意志や戸惑い、不安といった気持ちがしっかり見て取れるんです。ところが今回は脚本が悪いのか何なのか。なぜ彼女が小出恵介に惹かれたのか、いつ頃から好きになったのかという恋の部分が今ひとつでした。これで小出くん演じる岸にみすずが惚れる程の説得力があればよかったんだけど。最近人気の小出くん。情熱を内に秘めた寡黙な青年を演じるにはまだまだという印象です。セリフが少ないからこそ、ちょっとした目線や表情が肝となる何気に難しい役柄。残念ながら最後まで彼が何を考えていたのか、みすずにどんな感情を抱いていたのかが伝わりませんでした。題材といい、宮崎あおいといい、料理方法次第では相当面白い作品になれたと思うのだけど。ただ淡々とした暗い映画という感じ。何かもったいないです。