『有頂天ホテル』

ギャグが笑えるか笑えないかは人それぞれの微妙なツボによるけど、もう一つ重要なのはその世界にどっぷり嵌れるかどうかだと思う。嵌ってしまえば少々の事は温かく受け止めれる事が出来る。ところが最初にその切っ掛けを逸してしまうと、滑ったギャグが尚更寒々しく見えてしまう。何事も「掴みが大事」とはよく言ったもんです。で、私の中でツボに嵌る時と嵌らない時の差が激しいのが三谷幸喜作品。例えで言うと、『ラヂオの時間』が前者で『笑の大学』が後者、みたいな。『笑の大学』は正確には原作・脚本のみで演出はしていないから比較の対象と言えるかは微妙だけど、私にはシュールすぎた。と言うよりも、作者の独りよがりな感じがして、残念ながら笑いに乗れなかったという方が正しいかも。一方の『ラヂオの時間』は笑った笑った。何がいいって藤村俊二。いつも飄々とした演技で映画やドラマを盛り上げてるこの人が、ラストに全部持っていった感じ。あの一人SE*1は笑いすぎて死ぬかと思いました(笑)。今やすっかり大物俳優気取りの唐沢さんもすごく自然でいい演技だし。*2他の個性的なキャストもぶっ飛び具合がほど良くなじみ、三谷作品の良さが十二分に発揮されていたと思います。
そんな三谷幸喜が気合を入れて作った映画『有頂天ホテル』。上々な前評判に期待で胸はパンパン。それがいけなかったんでしょうか。確かに笑えるとこはクスリと笑えた。でも随所でミエミエに狙いすぎて逆にスベっている事も多々あり。ハズした瞬間のシーンとした空気。結構いたたまれなくなります。あとキャストが豪華な分視点が分散し、個々の物語がとても浅くなってしまったのも残念。もっとこう、何かしらの感動とかが生まれるのを期待していたのに、終始ドタバタの大騒動であっさり終わってしい、何だか拍子抜けでした。役者で目を引いたのはやっぱり役所広司さん。この方のコメディは意外な気がしたけど、そういえば昔時代劇『三匹が斬る!』に出ていたんだよな・・・。*3あとはYOUの歌がかなりきた。かっこいいです。篠原さんも先週始まった『アンフェア』とは180℃違うキャラで、”クネクネ”が夢に出て来そう(笑)。と、振り返ってみれは、何だかんだ言いながらも楽しい映画でした。

*1:効果音

*2:今の演技はどうも仰々しくて頂けない。断然こっちのがいいです

*3:小っちゃい頃親と一緒に見てた