[邦画]『クローズド・ノート』完成披露

沢尻エリカ扮する教員を目指す学生が、引越し先の部屋に残されたノートを見つけたことから始まる切ない恋の物語り。ありふれた女子大生の恋心は身近で、それなりに楽しむことはできました。でも、ミステリーとしては捻りがなさすぎてあっさりと先が読めてしまい、物足りなさは否めず。実はこの映画、手法が現在ロングラン上映中の『アヒルと鴨のコインロッカー』と全く同じ。でも、巧みな伏線で視聴者の目をかく乱させつつ、中盤からの種明かしで一気に観客を引き込んだのが『アヒルと鴨』なら、序盤から誰の目にもバレバレなヒントを見せておきながら、それをご丁寧に一つ一つ明かすので間延びしてしまったのが『クローズド・ノート』。謎解きも恋物語もどっちつかずの中途半端で、隠された秘密とやらが明らかになっても、あまり感動しませんでした。どうせなら、始めからミステリーよりも人物描写に注力して、切ない恋物語りをじっくり描いた方がずっと入り込めたように思います。
あと、レトロな雰囲気や服装なので時代設定が昭和かと思っていたら、おもいっきり”今”だったのにもちょっと違和感が。小学生もまさに昭和の生徒って感じで、主人公のバイト先が万年筆屋だったり、日記の中での矢吹先生が優等生すぎたりと、全体的にすごく浮世離れしていた。このリアリティのなさも、物語に入り込めなかった原因の一つだったのかもしれません。
これで登場人物にもっと魅力があればよかったんですが。沢尻エリカは演技そのものは悪くないし、確かに可愛いんだけど、キャラに深みがないんですよね。舞台挨拶でも「気楽に見れる映画なんで」の繰り返しで、作品への思い入れが全く感じとれなかったんだけど、上手いのに魅かれないのは、心が伝わってこないからなんだと思いました。それにしても舞台挨拶でのあの偉そうな立ち方に、妙に大人びて気取った話し方。生で見る”エリカ様”は思った以上にすごかったです。本当に20歳?でも、スクリーンの中ではそれなりに素直そうに見えるから、その点役者だなと思います*1。一方、インタビューの受け答えも共演した子供への接し方もとってもナチュラルだった竹内結子。対照的で好感度上がりました。映画の中でも子供に対する表情がすごく優しく、出来過ぎた感のある矢吹先生を嫌味なく自然に演じていて、母になってちょっと女優として深みが増したなという感じです。伊勢谷友介は相変らず演技は大味なんだけど、いつになく自然に見えました。彼はこういう芸術家タイプがよく似合いますね*2。ラストの号泣シーンは思わずもらい泣きしそうになったし、決して悪い作品じゃないんですが。全体的に引き込まれるような魅力に欠け、今ひとつ心に残らない作品でした。

評価 ★★★☆☆

*1:時々素がでるのか自信満々で小生意気そうに見えるときもあったけど

*2:さすがはリアル芸大卒